再会を期に3人の関係が拗れたわけなんですが、じゃあ彼らの高校時代に何があったのかって話ですよ。
この辺の話もどっかで捩じ込みたかったんですが、冗長になってしまう上に締切りに間に合わなくなるので割愛しました。
お詫びに設定のメモ書きを載せておきます。
丸藤 亮
会社員。妻帯者。子供なし。ネコ。
高校のとき、クラスメイトの天上院吹雪に惚れていたが、同性であることを理由に告白すらせず断念。
その後、大学で現在の妻と出会い、彼女が亮に好意を寄せていたことと、吹雪への気持ちを忘れるために結婚する。
順調な夫婦生活を送りつつも、唯一子供をもうけることだけは静かに抵抗していた。
しかし四度目の結婚記念日の日、ついに妻の方から子供の話が持ち上がる。
亮は妻との性交を想像し、その嫌悪感に耐えきれず、退勤後は駅の百貨店で無為な時間を過ごす。
その最中に高校時代のクラスメイトであった藤原優介と再会し、彼の誘いに乗って生まれて初めて男と一夜を共にするのであった。
夜が明けると、亮は自身の気持ちがわからなくなっていることに気付く。
自分がなぜ結婚したのか、なぜ吹雪への気持ちが忘れられないのか。
混沌とする思考から逃げるように、藤原の誘いに溺れていく。
藤原 優介
独身。タチ。
高校時代、吹雪と亮のクラスメイトだった。
卒業後は別の大学へ行ってしまったために二人とは疎遠だったが、亮の結婚式を期に一旦は再会。
それからまたしばらく連絡もなかったが、亮が駅の百貨店をブラついているのを発見し、二度目の再会を果たす。
亮に想いを寄せており、同時に亮が吹雪に気があることを知っている。
そんな亮が吹雪とではなく別の人間の、しかも女性と結婚した理由を吹雪を忘れるためだと察した藤原は、その心理的弱点を突いて亮を自宅に誘い込む。
何度か夜を過ごしたある日、吹雪を忘れられないでいる亮の気持ちを自分に向けようと、亮に内緒で吹雪を呼び出す。
自分と亮がセックスする様子を見て幻滅してもらうつもりであった。
天上院 吹雪
独身。タチ。
高校時代、亮と藤原のクラスメイトだった。
亮の結婚式を期に再会するも、その後は再び疎遠になる。
誰にでも仲良くできるフットワークを持ちつつも、自身はゲイであるためつかず離れずな関係ばかりが続く。
そんな彼が唯一親友と呼べるほど深い関係を築けたのは、後にも先にも亮と藤原だけである。
誰に対しても物怖じしない亮の態度に惹かれた吹雪は、卒業式の日に告白することを決意。
しかし式が終わると亮がそそくさと帰宅してしまったため、期を逸してしまう。
それから亮が女性と婚姻を結んだことを知り、吹雪の恋は終わったはずだった。
失恋から数年後、藤原に呼ばれて彼の家を尋ねると、なぜか亮とセックスをしている場面に遭遇。
忘れていたはずの恋が激しい劣情を伴って首をもたげるのを感じ、その衝動のまま藤原と共に亮を組み敷いてしまう。
この卒業式終了後に亮がそそくさと帰宅してしまったところがポイントです。
本作の亮は非常に卑屈かつ奥手な性格になっており、本命である吹雪に対して自身の恋心を隠そうとすらしました。
萌芽した瞬間から諦めた恋であり、学生である亮にとってその気持ちを持ち続けることは耐え難い苦痛でした。
3年の終わり、卒業式の日には既に限界だったのです。
別れを惜しむことなく姿を消したのは、そんな痛みから逃げるためだったんですよね。
それからの日々は本誌の通り。
亮が結婚式に2人を呼んだのは、高校最後の不義理を親友に働いてしまったという罪悪感からでした。
最後に奥付と遊び紙のギミックについてです。
遊び紙に印刷されているのは、離婚届の用紙です。
藤原と吹雪に外堀を埋められて八方塞がりとなった亮は、元の結婚生活には二度と戻れないと悟り、決断せざるを得なくなりました、というオチでした。
本当はもう少しくっきり印刷したかったのですが、どうやらあの様式って地域差があるらしく……?
自分の在住先とは違う自治体のやつですが、それでも引用元がバレるのはちょっと気が引けたのでぼかしを入れました。
後は〝離婚届〟の部分に奥付のタイトル(筆記体の方)が透けて写ると面白いかな、と思ってちょっと弄ってみたり。
時間がないなりに、結構遊べたんじゃないかな?