期間限定

曙光

    一 僕は、理想のセックスについて想いを馳せていた。 啄むようなキスが段々と深く、熱烈なものに変わる。 ただ身を寄せ合うだけだったのが、次第にきつく身を擦り付け合うようになる。それはまるでマーキングのような。 やがて真っ白なシーツの海…

満月と新月

    一 スクラップの山が、そこかしこで高さを競い合っている。 仄暗く垂れ込める曇天から、しとしとと雨が降り注ぐ。 ここは、暗灰色のフィルターをかけられた世界。 生命の色は、どこにも見当たらない。 静寂に、雨音がノイズを落とす。 どちらを…

ルナー・イクリプス

    一 成り行きで飛ばされた異世界にて同業者であるヘルカイザーと行動を共にするようになって、しばらく経った。 この世界には昼夜の概念がない。加えて四六時中闇夜が支配していながら、月齢らしきものも存在しない。そもそも月がないのである。 つ…

明月を喰らう

 ヘルカイザー。 地下より生まれし――怪物。 料理するために用意した羊の皮を剥ぐと、中身は腹を空かせた獰猛な獅子だった。 飢えを自覚した獅子は眼前の対者えものに向かって飛びかかると、無心に勝利えさを貪った。 獅子は無数の食べ滓に塗れた口を歪…