サリエリは聖職者でありながら悪魔をその身に宿していた。
もちろん生まれつきではない。見た目は悪魔の如しだが、彼はただの人間である。
サリエリには六歳年下の親友がいる。名前はアマデウスといった。
彼は病気がちだった。三十二の頃、重い病を患い本来であれば幾許もしないうちに死を迎えるはずだった。
医者に奇跡と言われる程に落ち着いた余生を過ごし、罹患してから三年が経った頃、容態は急変した。
青白い顔でベッドに横たわるアマデウスの手を握りしめながら、サリエリが神に祈りを捧げ続けた。
しかし現れたのは、一角獣の姿をした複眼の悪魔だった。
悪魔は告げた。
『その男を助ける代わりに、僕と契約してよ』
迷いはなかった。このときサリエリは、自分が聖職者であることを放棄していたのだ。
それはもしや、心のどこかで神に祈っても無駄だと感じていたのだろうか。
サリエリは悪魔の手を取ることで、親友を生き長らえさせることに成功した。
そして今。
腹に悪魔を飼う神父は、怪異解決の専門家として教皇庁から各地へ派遣される日々を送っている。
その方法が、神の敵である悪魔に力を与える行為だと知らずに。
そして生贄となった神父は、悪魔が食事をするための皿として――
膨れた腹を抱えその身を捧げ続けていた。