三
照明の落とされたホテルの一室。
やけに上質で大きなベッドの上。
無様に全裸を晒して寝そべる俺。
それに覆い被さる、知らない男。
性行為の知識には笑えるほど疎かった。
まして同性同士など最早未知の領域だ。
そんな俺でも理解できたことがひとつ。
これは強姦という名の売春行為である。
それだけだった。
始めはただ苦痛なだけだった。
触れる掌は、さながら虫が這い回るかのようだった。
性器を扱かれる感触は、まるで排尿を促されているかのようだった。
体内を犯す肉の熱に、全身が溶かされていくような気がした。
苦痛なだけのはずだった性行為が快感に変わる。
思えば俺は、苦痛を快感にすげ替える才能があったのかも知れない。
痛かったのは事実だ。
苦しかったのも事実だ。
辛かったのもまた事実だ。
そしてその隣には快感があった。
理由など、知りたくもない。
ある日の相手は、プロリーグ運営委員会の幹部だった。
ある日の相手は、俺を気に入った地下の上客だった。
ある日の相手は、デュエルを辞退したいと嘆願に来た対戦相手だった。
ある日の相手は、大手デュエル雑誌の編集長だった。
地を這い蹲って勝利を貪るしか能のない俺を、奴はあらゆる手を使って売り込んだ。
これはそんな手段のひとつに過ぎない。
拒否権など皆無だ。
否。
これは義務だった。
拒否してはならないという義務なのだ。
デュエルにしがみ付き、渇望する勝利を得るためには悍ましくも必要な儀式だった。
愛人のように男の甘言に耳を傾けることも。
情婦のように男の愛撫を甘受することも。
娼婦のように自らの意思で脚を開くことも。
女のように男の肉を受け入れて鳴くことも。
どんなに身体が拒否反応を示しても――
それら肉の触れ合いをいいものとして受け入れなければならない。
どんなに固く記憶に封を施しても――
自分自身がとった選択をなかったことになど、できはしない。
これらは全て、拒絶しなかった俺の罪であり罰である。