堕胎告知 ※R18 - 2/4

 ギシリとスプリングが軋む。二人分の体重を支えるベッドは、俺達の動きに併せて悲鳴を上げた。だがそれも、湿度を伴った熱に浮かされ鈍化した脳にとっては、性交を盛り上げるためのスパイスでしかない。急速にボルテージを上げていく欲望は、それぞれ違う方へ向けて迸る。俺は自身の腹へ、相手は俺の中へ。
 絶頂を極めても、相手の欲は鎮まらなかった。ごめん、もう一度、と掠れた囁き声につられて俺も再び熱を堆積させていく。これは最早条件反射だった。熱く湿った吐息と、体内で膨張する肉の感触が、行為の続行を促すのだ。男の先端が前立腺を掠めて、臍の下がひくりと震えた。とうに理性と切り離された本能が、男の肉棒を締め付ける。なんだ、お前も乗り気じゃないか。男が嗤った。諸手を上げる恰好で両手がシーツに縫い留められ、律動が再開される。
 疲労が臨界に達していた俺の声は、嬌声としての体裁を失っていた。続きを欲しがるような動きを見せながら、俺自身はこの行為に限界を覚えていたのだ。快感は温くなり、じわじわと炙られ続けるこの時間に気が狂いそうだった。どうにか括約筋に力を込めて、ほんの僅かでも拾い上げようと苦心するも、その量は指の間を落ちる砂のように呆気ない。
 もうやめてくれ。
 それは、霞がかった思考が紡いだ苦肉の訴えだった。いつの間にか俺は、涙の膜でぼやけた瞳に、男を映すことができなくなっていたのだ。たのむ、もうこれいじょうは。致命的なバグを吐き出したまま稼働し続ける俺の脳が、男の姿を酷く恐ろしいナニカひに変貌させる。そのことに気付かない俺は、取り零し続ける言葉を必死に掻き集めて請願し続けた。
 すると、体内を穿つ男の肉が膨張したような気がした。荒くなる吐息。興奮していることは明白だ。男は再び、俺の耳許に唇を寄せる。

「なら、と言うんだな」

 何を言ったのか、このときの俺は全く理解できなかった。ただその科白を口にすれば、この生温い拷問から解放されるのだと信じて、吐いた。
 何度も、何度も、男の気が済むまで俺は吐き続けた。それしか縋る道がなかったのだ。五感も身体の制御も、何もかもが俺の手を離れてしまった今、その一点だけが頼りだった。
 男は野太い呻きを上げて、幾度目かの欲を放った。濃密かつ量の多いそれの圧迫感に、俺は窒息しそうになった。

 尻から溢れ出る精の感触に全身が震える。それを快感によるものと解釈したらしい男は、クスクスと笑みを零しながら、俺の下腹部を撫でた。