ルパン三世

来たる山の方角

モブがただ可哀相なだけの話。  隙間風に温度を奪われた頬が痛みを訴える頃に、私はうたた寝から覚めた。炬燵から身を起こすと外の雪は止んでおり、周囲は天井近くに掛けられた時計のカチコチという音を残して静まり返っている。時刻は夕方を示し…

しがらみ

ルパンに先立たれた五ェ門の死に支度。 「次元、さむい」 沈みかけた意識に、控え目な呼び声が縋り付いてきた。夜が深まって間もない部屋で寝ぼけ眼のまま対象に焦点を絞るのは案外難しく、俺は覚醒を促すように唸りながら二度ほどかぶりを振る。…

食いっぱぐれ共の舐め合い

「えっちなキス」をテーマに書きました。  仕事を終えた二人は、宵闇に身を潜めながらアジトへ帰還する。 追っ手の有無に気を配りながらドアノブを捻り、音を立てぬよう開いた扉の隙間に身を滑り込ませると、そのまま縺れるように抱き合った。埃…

血肉

※拙作「夜陰」の続きです。  カリオストロ城の地下水路で身を潜めながら、来る決戦に向けて準備を進めていたルパン達だが、ついにすべてのカードを揃え終えた。 その晩、「決起集会といこうぜ」と言いだしたのはルパンだった。次元はすぐさま酒…

夜陰

※Part5、22話後 「忘れたか」 ルパンとの一騎打ちで、五ェ門の耳は確かにその句を聞いた。それは視覚を遮断してルパンの動きを捉えようとする最中のことであった。 研ぎ澄ました感覚は獲物の姿を変えた。在りし日の自分、まだ人斬りとし…