石川五ェ門

来たる山の方角

モブがただ可哀相なだけの話。  隙間風に温度を奪われた頬が痛みを訴える頃に、私はうたた寝から覚めた。炬燵から身を起こすと外の雪は止んでおり、周囲は天井近くに掛けられた時計のカチコチという音を残して静まり返っている。時刻は夕方を示し…

血肉

※拙作「夜陰」の続きです。  カリオストロ城の地下水路で身を潜めながら、来る決戦に向けて準備を進めていたルパン達だが、ついにすべてのカードを揃え終えた。 その晩、「決起集会といこうぜ」と言いだしたのはルパンだった。次元はすぐさま酒…

夜陰

※Part5、22話後 「忘れたか」 ルパンとの一騎打ちで、五ェ門の耳は確かにその句を聞いた。それは視覚を遮断してルパンの動きを捉えようとする最中のことであった。 研ぎ澄ました感覚は獲物の姿を変えた。在りし日の自分、まだ人斬りとし…