「ぅ……っ、く、ぅん……」
空っぽどころかあるはずのない胎が子種を求めて熱く疼く。じくじくと内側から腐り落ちるように蕩けた肉の隧道。性の入り口と成り下がったソコは、ぱくぱくと灼熱の楔を求めて今もなおはしたなく開閉している。
誰もいないのに。
私しかいなくなってしまったのに。
相手は体格のいいアルファ性の男だった。急に始まってしまったヒートで動けなくなった私の腕を引いてホテルに連れ込み、私の両脚を広げて股の様子を目にした瞬間、興醒めした顔をして出て行った。
私はそれから小一時間ほど、やけにバウンドするシーツの海を緩慢に泳ぎ続けている。
「……ぁ……はぁ……はぁ……」
ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てながら、必死に、形振りかまわず、自慰に没頭する。擦り過ぎて感覚が鈍くなっても陰茎を扱く手を止められない。刺激が温くなってゆく度に握る手に力を込め、鈴口を引っ掻く強さと頻度が増してゆく。数えるなどとうにやめてしまったが、独りで放り出されてから最低でも三回はイっただろう。それでも足りなくて苦しくて――駄目だ、やめられない。
「ぁ、ぁ、ぁぁ……ぁう……ッ、く!」
どこを触れば鎮まるのか、本能では理解している。しかし中途半端に理性が残った脳は、そこに触れれば更に止まらなくなってしまうからと見て見ぬ振り。雌としての快楽を求めているのに雄の象徴を必死に弄る私の行動は、端から見ればさぞ滑稽だろう。誰もいないのだから、外聞なぞ気にしたところで無駄だというのに。
「……は、ぅく……っん……!」
神経が麻痺してとうに萎えていたペニスがつるりと逃げ出す。疼く身体は逃がすまいと再び手を伸ばすも、同じ動きを繰り返したせいで硬直していた肘が軋んだ。関節の痛みにいっとう身体を縮こめて、酷く緩慢な動作で袋を掴む。このとき意図せず指先が掠めたその先の感触に、私の咽喉はいっとう上ずった声を吐き出した。普段ならば排泄に用いる器官が、垂れ流したカウパー液でしとどに濡れそぼっている。
触れてしまえばやはり止まらなかった。くるくると襞をなぞれば早く寄越せといわんばかりにひくついた。見えないが、きっと魚の口のように動いているだろう。海中を漂うプランクトンを吸い込むように、ぱくぱくと指先を食んでいる。
すぐ傍に
そんな、無様な声だ。
指先が少しずつ中へと沈んでゆく。すると肉の筒が迎え入れるように蠢いた。
そして腹の中で粘液が攪拌される音がした瞬間、全身を駆け巡る稲妻のような感覚に震え――
私の理性は何もかも焼き切れてしまった。