COLLAPSE - 1/4

続編「HELL BRIDE Episode1 エルパレム炎上」より、カーティス×エドモンド、ジュドー×エドモンドです。
「カーティス×エドモンド敗戦ルート」その後、眷属猊下に狂い散らかした腐女子による地獄エロ。
過去に参加したwebイベントで無料配布したものです。
その節はDLしてくださり、ありがとうございました!

 

 腹の奥で痛みにも似た疼きを覚えて、私は目を覚ました。
 物音のする方へ視線を遣ると、部屋を出る支度をしているカーティスの背中があった。脱ぎ散らかされていた衣服を綺麗に着直し、姿見の前で入念にチェックをしている。鼻先が触れそうなほど睨んでいたかと思えば、全身が見える位置まで後退してくるりと身を翻す。やがて深い溜め息をつくと、彼はおもむろに振り返り、私と目が合った。
「身体はどうだ?」
「……」
 その声に私を労るような音が含まれていたが、彼らしさを感じず、どうも慣れない。返答に窮していると、カーティスは無言で近付いてきた。ベッドの縁に腰掛け、指の背で私の頬に触れる。羽根を掠めるような感触がくすぐったくて堪らない。ぞわりと背筋を駆けるものを感じ、私は反射的に身を捩る。
「嫌か?」
 今度は髪に触れてきた。髪留めを失って散らばるそれを一房手に取り、口元へ持っていく。それはまるで、意中の女性をダンスに誘うかのような仕草であった。
「……っ」
 髪に感覚など通っていないはず。しかし私の身体は、紛れもなく反応していた。彼の手元に目が離せないまま、昨晩の情事が蘇る。
 そんな私の変化を、彼は見逃さなかった。
「昨日はあんなに激しく交わったというのに、まだ足りないのか」
「そ、んなことは……」
 彼は髪から手を離し、シーツに手をついて顔を近づけてくる。切れ長の瞳を緩く綻ばせ、私の頬へ口付けを落とす。
 彼の香水混じりの体臭が、ふわりと鼻腔に入り込む。その体臭の中には、ほんの微かだけ精の匂いも含んでいて、人ならざる者に変じた私の身体は、一層の飢餓に苛まれた。
「……はぁ……は、ぁ……」
 感覚が過敏になっていく。特に、腹の中が虚で満たされていくのが苦しくて堪らない。まるで節操をなくした子供のように、触れるものすべてから快感を拾おうとしている。
 それが更なる渇きを生み出し、私はその元凶たる彼の唇から身を捩って逃げた。
「カー、ティス……やめっ……ぁ」
「まったく……とんだ悪食め」
 私が拒絶の意思を示せば、彼は名残惜しげに離れていった。ベッドから立ち上がり、悠然とした足取りで出口へと歩いて行く。
 しかし彼は、ドアノブに手をかけたところで立ち止まった。数拍の後、再び私の方へ振り向くと「大人しくしていろ」と言いながら薄く笑みを浮かべて。そんな、ノトブルガの徒を象徴する彼の灰色の双眸から、昨晩と同じ熱を見た。きっと気のせいではないだろう。
 カーティスの後ろ姿が扉の向こうへ消えた後も、私の視線はしばらくそこから動けなかった。
「……」
 ゆっくりと、筋肉の硬直を解くように瞳を動かす。高い天井から大きな窓枠へ。すっかり見慣れてしまった室内の景観に心が動くことはない。あるとするなら、全身が重いことと、彼に焚き付けられた下腹部が疼いて不快なことくらいか。
 上体を起こす。室内とはいえ、全裸のままでは少し寒い。私は近くにあったシーツを引っ張って羽織る。教皇という肩書きを失ってしばらく経つが、この手持ち無沙汰な時間は今もまだ慣れない。物心つく頃から毎日が激務であったから、帰りを待つだけの時間の過ごし方がわからないのだ。それでも、丸一日ベッドの上で過ごすことだけはどうしてもしたくなくて、意味もなく部屋の中を徘徊する。
「っ……ぅ……」
 ベッドから立ち上がれば、酷使した下半身が悲鳴を上げた。腹に力が入らず、何かに掴まっていなければ、すぐさま崩れ落ちてしまいそうだ。裸身を隠すようにシーツを巻き付け、内腿を伝う感触に震えながらベッドから離れる。
 しかし疲労困憊の身体はすぐに力尽きた。かくん、と膝が折れて、私は咄嗟に窓枠へしがみ付く。
「……あぅ……ん、うぅ……」
 彼に注がれた精が流れ出すのを、臀に力を込めて防ぐ。これ以上糧を失ってしまえば、私の意識は獣性に支配されてしまうからだ。すでに無視できないほど肥大化してしまった欲求だが、自らの手で発散するには理性が邪魔をする。
「……はぁ、は、ぁ……」
 紅い空が私を見下ろす。いつしか昼の青さを忘れてしまったそれは、日夜問わず終末を思わせる色が広がっていた。
「……」
 眼下に広がる荒野では、住み処をなくした人間達がそこかしこで跋扈している。痩せ細った身体を懸命に動かし、怨嗟や悲嘆を吐き散らしながら土の上を這う。
 景色は日ごと荒れていく。その移り変わりを、私はただ眺めているだけだった。どれだけ目に焼き付けようと努めても、愛する民達の身に起きている事象だと認識できない。まるで稚拙な演劇を見せられているかのように、心を素通りしていく。
 赤子を抱いて這う母親、親に棄てられて孤独に横たわる子供。皆、骨と皮だけの痛ましい姿だが、感受性をなくしたこの手では、彼らに差し伸べることができない。
 空の色が変わると、地上は色とりどりの絶望が横たわるようになった。青が失われた日、彼らを救う神もまた死んだのだ。
 視界が静かに輪郭を崩していく。ぽろりと頬が濡れて冷える熱に身震いすると、解けた髪が首筋を撫でた。
「……っ……」
 次第に、忘れようとしていた腹の疼きが戻ってくる。凍り付いていた心は火照りと飢餓感でドロドロに溶け、主の熱を求めて暴れ出す。
「……ん……ぅぅ……」
 シーツごと自らを抱き締め、ずるずるとその場にへたり込む。腕や肩に爪を立てても、勃起していく性器と揺らめく腰は止まらない。
 堪らず下肢へ手を伸ばす。だらしなく涎を垂らすその茎を握り、滑りに任せて乱暴に扱く。
「あぁ……ぅ……はぁ……」
 敏感な場所をひたすらに擦る。ただ解放されたいだけの自慰は、強い刺激は得られるものの絶頂に至らない。
「はぁ、は……っああ!」
 衝撃に腰が跳ねれば、快感はいずこかへ逃げてしまい、振り出しに戻ってしまう。下腹に力を込めて無理やり果てても、突き抜けるような感覚には程遠い。
 気が付くと私は、陰茎を扱いたまま臀のあわいへ指を突き立てていた。
「ぅ、んん……っ」
 先走りで濡れそぼったそこは、二本の指を難なく呑み込んだ。肉は柔らかさを残したままで、わざと音を立てながら弱い場所を探る。掌を上に、第一関節まで挿入した浅いところで指を折る。
「……あぁっ、あっ、あぁ……」
 房事の際、彼はその場所を責めるのが好きだった。痛みを感じない絶妙な力加減で、内側から押される圧迫と滑りを伴った摩擦の両方を齎してくれるのだ。
 それと同じ感覚を味わいたくて、彼の動きを思い出しながら中を弄る。しかしどうしても上手くいかない。確かに快感は得ているはずだが、掴みかけたところで霧散してしまうのだ。
「んぁぁ……っ、なん、で……」
 指を増やしたり、前と同時に責めたりしても、一向に絶頂の兆しがない。腰を揺らしても、腹に力を込めても、胸を弄っても、恥を捨てて声を上げても、彼の顔を、声を思い浮かべても、イくことができない。
「ぁあぁぁぅ……カ、ぁティス……かーてぃ、す……ぅんん」
 際限なく膨れ上がる欲。極限まで過敏になった身体は、今やどこに触れても性感帯として反応する。終わりのない快感はもはや拷問に近く、私は発狂寸前だった。ぼろぼろと溢れ続ける涙。滲みきった視界を閉ざせば、ぱたぱたと音を立ててシーツを濡らす。
 やがて呻きのような声が聞こえ始めた。それは打ち棄てられた民衆の怨嗟で、老若男女問わず私の存在を糾弾する。
 しかしこれは幻聴だ。上階の閉め切った部屋に居れば耳に届くはずがない。頭では理解していても、箍の外れた妄想は現実との境界を容易く壊す。頻りにかぶりを振っても、声は頭に響いて離れない。
 ――たすけて。
 そんな譫言を繰り返しながら、私の意識は淫蕩の坩堝へ沈んでいく。
「エドモンド……?」
 そのため微かに聞こえる彼の声が幻聴なのか現実なのか、区別がつかなかった。
「んあぁ、あっ……っ…………ぁ……?」
「エドモンドっ」
 焦りを感じる声だった。顔を上げて辺りを見回すと、扉の前に立つ人がいた。
「……カー……ティ、ス……?」
 その人物が誰か認めた瞬間、腹の底から渇望が溢れ出す。
 足早に彼が近付いてくる。私は体液に塗れた両手を広げて彼を誘い、その首に腕を絡めて口付けた。
 ただ唇を重ねただけなのに、まるで水を受けた土のように全身が快感で満たされていく。
「んっ……ぅ、ん……んん……」
 カーティスは最初こそ狼狽えていたが、やがて私の欲するものを理解するとすぐに応えてくれた。あつくて甘い舌が、執拗かつ情熱的に腔内を犯す。その間に、彼の掌が私の肌に触れた。
「んっ! んぅ……ふ、ぅ」
 武骨な皮膚が、性的興奮を煽るように這い回る。臍の下を撫でたかと思えば脇腹を擽り、そのむず痒さに身を捩ると今度は胸に触れられた。薄っぺらい私の胸を、彼は女性の乳房のようにゆっくりと揉みしだく。むずむずと焦れったい感覚に、私は涙を流しながら更に深い口付けを強請る。
 しかしカーティスが触れたのは別の場所だった。
「んんぅ! んあぁ、あっああ!」
 胸の頂を中心に雷が走る。自分でどんなに弄ってもろくな快感にならなかった乳首が、彼の指だけでいとも容易く昇り詰めてしまった。びくりと仰け反る背、反射的に唇が離れてしまう。
「……う……ぁ……」
 意識が中空へ飛んだまま戻れない。私は長い余韻に浸りながら、更なる絶頂を予感した。射精の感覚が全くなかったからだ。まるで膨らみ過ぎた風船のように些細な切欠で破裂してしまいそうな――
「……まさか、イったのか……?」
「ひぃっ!? ……ッッ!」
 カーティスの掌が私の二の腕を掠めた途端、私はすぐに果てた。視界が明滅し、全身が引き攣ってガクガクと痙攣する。背筋を駆け抜ける衝撃が強過ぎて、本当に快感だったのかわからない。しかし身体は確かに絶頂していた。
 頻りに私を呼ぶ彼の声が遠い。半開きの唇は硬直したまま、返事の代わりに消え入りそうな声で喃語をぽろぽろと垂れ流す。またしても、射精の感覚はなかった。
「……ぁ……ぁぁ……」
 無意識に腰が揺れる。彼の服が汚れるのも構わず、はちきれんばかりに膨張した熱の先端を擦り付ける。何度果てても快感が終わらない。直接性器を弄っているのに、どうしてイけないのだろう。
「エドモンドッ……もういい……」
 やがてカーティスは、主人の身体で自慰をする私を抱き締めて制止した。力強い腕の感触と温もりに、私は涙に濡れた顔を埋める。
 わかっていた。この飢えを満たすには彼が必要不可欠であることを。霞で腹は膨れないのと同じように、あるじの精なしで快感を高めても、欲求が募るだけなのだ。
 身体も意識も、彼の眷属となるために作り替えられてしまった。人間であった頃の自分を保とうと務めても、腹に印を刻まれたあの日から、それは無駄な足掻きなのである。
 現実を受け入れなければならない。私は思い知ってしまった。
「……カーティス……」
「どうした……」
 ずっと前から限界だった。どうして今まで耐えられたのか、今や何もわからない。
 唇を動かすのも精一杯な状態で、彼に伝わるよう懸命に声を出す。
「……た、すけて……」
 彼は無言ですぐに応えてくれた。
 カーティスの掌が、先走りで濡れそぼつ私の内腿を這う。そこから潤滑を掬い取ると、臀のあわいに塗りたくるように侵入する。先ほどまで自分で弄っていたそこは、二本の指を難なく呑み込んだ。
「はぁぁ……ぁ、ぁぁ……」
 それは待ち望んでいた感覚だった。甘く痺れるような優しい快感に、私は眉を寄せる。
 息を吐けば鼻にかかった声が出た。淫蕩に耽る女性のようなそれが自分の喉から出たものだと認識できず、更なる興奮に身体が火照っていく。
 甘美に思考が溶けていく。
「あぁ、ん、ぁ……はぁん……」
 彼にくじられた肉壺はすぐに蕩けていった。いつの間にか指は三本に増やされ、肉壁を押し広げながらぐちゅぐちゅと撹拌される。中でも腹側を押されたときの鈍い圧迫感が堪らない。
「はあぁぁ! あっ、ああ!」
 何度も交合し私の弱点を熟知するカーティスの指は的確だった。わざと音を立てながら執拗にその場所を責め、私をイかせようとしてくる。快楽に弱い身体はいとも容易く翻弄され、絶頂を繰り返した。
 幾重にも重なる快感の波が大きくなっていく。震える膝に力が入らず、彼にしがみ付いていないと上体が崩れ落ちてしまいそうだ。呼吸も速く浅くなり、意識は更に輪郭を失って性欲と混ざっていく。
「……っ、もう……は、やく……!」
 はやく、彼の暴力的な熱がほしい。何度も受け入れているのだから、そんな壊れ物を扱うように焦らさないでくれ。戦慄く口を懸命に動かし、言葉にならない訴えを続ける。
「っ、焦るな。腰を浮かせてもう少し待て」
 お願いだ。苦しくて堪らないからこれ以上待たせないでくれ。もう拒んだりしないから、はやく、たすけて――
「はぁ、ッ! ……ァ……か、は……ッ」
 衝撃は不意にやってきた。対面で彼を跨ぐような体勢になったかと思えば、腰を掴んで下ろされたのだ。臀のあわいに彼の怒張が触れると、位置合わせもそこそこに挿入された。
 指とは比べ物にならない質量が、柔らかい肉壁を押し広げて侵入してくる。馬並みのそれが奥へ進むほど、内蔵が圧迫されていくようで息が詰まった。
「……っ……!」
「かはっ、あ゛、ぁぁ……う、ぁ……」
 深く息を吐き、そしてゆっくりと吸う。全身の緊張を解きほぐすようにそれを繰り返していくと、ぞくぞくとした感覚が下腹部を中心に広がり始めた。彼の太さ、硬さ、熱さを感じながら、私は自身の掌を臍の下へと這わす。内側から押し上げられて硬く張るそこには、微かな膨らみがあった。
 充足感と多幸感が押し寄せる。
「……ははっ……」
 ずっと欲しかったもの。
 私は無意識に笑みを浮かべていた。もっと欲しい、この腹が膨れるまで彼の精で満たされたい。そんな欲求が溢れ出し、自ら腰を振る。
「あっ……ぁん、あ、あっ……♡」
 ぐちゅっ、ぬぽ――卑猥な音を立てながら肉壁を抉る。太いカリ首を押し付けるように擦れば、甘ったるい嬌声が口をついて零れた。ゴリゴリと腹が突き出そうなほど仰け反ると、強い圧迫に反応して彼も呻く。
「……エ、ドモンド……っ」
「んああ゛っ♡ かぁ、てぃ、す……かーてぃす、ぅ♡♡」
 快感を伝える代わりに名前を口にすれば、中の楔は更に膨張する。苦しくて何度も息を詰まらせたが、今の私にとってはそれも快感のひとつだ。
 弱い場所を擦りながら、まるで骨という骨が溶けていくかのように錯覚する。彼の齎してくれる熱ならば、余計なことばかりを考える意識すら溶かしてくれるはずだと思った。
「ぅん♡ あ゛ぁ゛っ♡ ほ♡ お゛……♡」
 彼の先端が鈍い音を立てて奥を突き上げるたびに、暴力的な快感に襲われて肉壺が蠕動する。きゅうきゅうと中を締め付けながら、急速にせり上がる射精欲に内腿がガクガクと痙攣する。
 腹の奥で慎ましく閉ざされていた口が徐々に綻んでいく。精液と腸液でとろとろに蕩けたそこへ、彼の怒張は容赦なく暴いた。
「んはぁああ゛あ゛ぁぁ♡♡ はぁ゛……っ♡」
 視界が、意識が明滅する。ぐぽっ、と音を立ててこじ開けられた結腸がきゅんきゅんと悲鳴を上げ、私は断続的な絶頂に襲われた。これだけでも十分苦しいのに、中の締め付けに触発されたのか、彼の怒張がピクリと震え大量の精液を噴射する。
「……ぁ゛、お゛……♡ はぁ゛♡ ぁつ、い……♡♡」
 最奥の更に奥、人間が男女問わず悪魔の子を孕むとされる〝生命の器〟へ彼の精が注ぎ込まれていく。尋常ではない量が収められていき、下腹部になだらかな膨らみが生まれた。
 許容量を超えた分は結合部の隙間から溢れ出し、彼の膝と床とを白く汚す。
「……は……♡ ……ぁ♡ ……」
 余韻に浸りながら視線を落とすと、彼の腹に大量の精液が付着していた。その持ち主は考えるまでもなく私で、ああイけたのか、と他人事のように思う。あんなに渇望していたというのに、いざ実際に射精できると何とも呆気ない。
 ふわふわと覚束ない思考を巡らせている間に、吐き出し終えたカーティスの性器はみるみる萎んでいく。最奥の器から栓が失われ、全身を包んでいた充足感と共に精が流れ出てしまう。
 そして入れ違うようにやってくる喪失感は、民衆の阿鼻叫喚を連れていた。
「……や、ぁ……ぃやだ……」
「っおい、エドモンド……!」
 頭に響く叫びの矛先がに向かっているのか、私は考えることを拒む。強迫観念じみた恐怖に襲われて、私は縋るように中のモノを締め付けた。もう一度彼で満たされたい。その一心で律動を再開させる。
「ゃ、あ♡ ぁん……♡ はぁ……♡」
 やはり自ら動くとしても、彼を収めて貪る快感は格別だ。涙と汗と涎でぐちゃぐちゃになった顔を振り乱し、髪が唇に引っかかるのも構わず夢中で腰を振る。するとカーティスの呼吸が再び乱れ、むくむくと勃起させていった。腹の中で急激に増していく質量。その圧迫感が、連中の声を掻き消してくれる気がして安堵する。
「あぅ……♡ うぅ、っんん♡ ふぅ♡ ……ちゅ……♡」
 しかしそれでも恐怖は拭えなかった。彼の首に腕を回し、口付けを強請る。呂律が回らず言葉にできない代わりに自身の身体で精一杯に彼を求め、縋った。
「あン♡ ああっ♡ あっあ、あぁ♡♡」
 私はカーティス・ノトブルガ・グレイの眷属であり、彼から齎される快感を糧に生きる悪魔である。
「はぁう♡ うあ♡ ァひ、ぃ♡ ぁ……きもち……♡♡」
 もう二度と余計な自尊心を持たぬよう、この事実を自らの心身に刻みつけなければならない。
 私はもう人ではないのだから。
「ぁ、てぃ……す♡ ……カー……ティス♡ ぅぅ♡♡」
 彼がいなければ生きていけないから。
「……い♡ ……っ♡ しょに……ィ♡」
「……ッ!?」
 不意にカーティスの動きが止まった。彼からの突き上げがなくなり、私はもどかしさに身を捩る。独り暗闇の中へ放り出されたかのような切なさに涙が浮かぶ。
 ――カーティス、どうして。
 震える唇を緩く開閉させて彼を呼ぶ。彼はどうして、そんなにも泣きそうな顔をしているのだろう。
「……っ♡ ア……♡」
 そう思ったのも束の間、彼は私をきつく抱き締めて律動を再開した。首筋に顔を埋め、噛み付くようなキスを落としながら激しく奥を穿つ。ぐずぐずに熟れきった肉がぐちゃぐちゃと音を立てて快感を積み上げていく――
「はァ♡ ……ぁああアぁァぁぁあァ♡♡♡」
 やがて今まで一番深い場所をくじられた瞬間、全身に稲妻が走り背筋を大きく仰け反らせた。私と彼は同時に絶頂し、大量の精を吹き散らす。
 固くて広い、彼の腕の中。その温もりに包まれて――
 私は重い瞼を閉じた。