精霊について各々の見解 - 1/3

【藤原→亮】

 丸藤に精霊の姿が見えないって聞いたとき、俺は驚いたよ。だってアイツ、過去に誰にも話してないオネストのことを言い当てたことがあるんだ。
 厳密に言えばそのものズバリって訳じゃない。ちょっと切り揃えた程度の髪型に違和感を覚える位の細やかささ。
 アイツは元々、勘の鋭い奴だった。デュエルをするときは何となく調子がいいかどうか判るらしいし、ドローパンを引くときはどれが目当てのパンか判るらしい。一度どんな風に感じるか聞いてみたことがあるんだけど、よくわからないって返されたっけ。自覚がないらしいな。
 大体、一番のリアリストが一番直感型ってどういうことだよ。
 でも今の丸藤を見てると――寧ろ精霊が見えなくてよかったと思う。
 ほら、精霊が見える奴って中々起伏の激しい人生を歩んでると思わない? 俺とか、遊城十代とか、ヨハン・アンデルセンとかさ。ああ、万丈目準もそうだっけ。とにかく不可視の存在とコミュニケーションが取れるって物凄いアドバンテージだからさ、精霊からすれば世界の救世主になりやすいんだよ。そのお陰で、このデュエル・アカデミアを襲う危機を何度も救ってくれた訳だし。
 ――そうだよ。俺も危機の一因だよ。悪かったな。一応これでも反省してるんだ。
 で、だ。
 仮に丸藤にその能力が備わっていたとする。
 するとどうなると思う? きっと強過ぎる責任感と貪欲過ぎる闘争心によって身を滅ぼしかねない。学園内でデュエルする丸藤って、何か物足りなさそうだったし。ヘルカイザーってのになってから最近までの丸藤について吹雪に教えて貰ったんだけど、正直言って狂人の所業だと思ったよね。勝利のために、文字通り命を削る奴なんかいないだろ。
 つまり、そんな強大な力を手にした丸藤が辿る未来は、おおよそ碌なもんじゃないってことだ。
 カードの心が解るからデッキがデュエリストに応えてくれやすいって利点もあるけれど、それ以上に俺達の住む次元も含めた十二次元の橋渡しも求められる。丸藤はそれに応えうるだけの技量を持ったデュエリストだけれど、きっとそれをしたら本当に死んでいただろうね。俺が言えた義理じゃないけど、これ以上アイツに修羅の道を歩ませたくない。
 だから精霊が見えないことに驚きはしたけれど、それ以上に安堵の方が大きいかな。
 丸藤ほど敬虔なデュエリストって、中々いないからさ。